涙が愛しさに変わるまで


……なんで?



めったに社長室から出ない桐沢社長が……。



「水野ー。おまえの書類は後で持ってこい。コイツが帰ったあとにな。」



そういってあたしをエレベーターから引っ張り出した。



あたしの………左手を掴んで……。



水野課長はなにも言わなかった。



あたしが桐沢社長に片手を掴まれたまま引っ張られていたとき、もうエレベーターは閉じていた。



そのあと人気のない会議室にあたしはつれて来られた。



「ったく!おまえはバカか!?俺がいかなかったら襲われてたぞ!」



そういう桐沢社長の横であたしはなにも声を出せなかった。



……本当に怖くて。



……気持ち悪くて。



だんだん涙がたまってきたとき、あたしはがっしりした腕に包まれた。



「大丈夫だから…。泣くな真依。」



あたしは優しくなにかから守るように抱きしめられた。



落ち着くあなたの優しい声に一筋の涙が流れた。



< 17 / 244 >

この作品をシェア

pagetop