涙が愛しさに変わるまで
……なんで?
めったに社長室から出ない桐沢社長が……。
「水野ー。おまえの書類は後で持ってこい。コイツが帰ったあとにな。」
そういってあたしをエレベーターから引っ張り出した。
あたしの………左手を掴んで……。
水野課長はなにも言わなかった。
あたしが桐沢社長に片手を掴まれたまま引っ張られていたとき、もうエレベーターは閉じていた。
そのあと人気のない会議室にあたしはつれて来られた。
「ったく!おまえはバカか!?俺がいかなかったら襲われてたぞ!」
そういう桐沢社長の横であたしはなにも声を出せなかった。
……本当に怖くて。
……気持ち悪くて。
だんだん涙がたまってきたとき、あたしはがっしりした腕に包まれた。
「大丈夫だから…。泣くな真依。」
あたしは優しくなにかから守るように抱きしめられた。
落ち着くあなたの優しい声に一筋の涙が流れた。