涙が愛しさに変わるまで
考えなくていいって言われても……考えちゃうよ。
「まー子?」
急に名前を呼ばれて心臓がはねる。
「なんですか!?」
「…キスしてごめんな?」
あたしの頭を撫でながら、桐沢社長は悲しげに笑った。
なんであたしは桐沢社長に謝られてるの?
あたしはこの会社で一番桐沢社長に近いのに……
あなたのことがまったくわからない……。
あたしが漠然としているとエレベーターが社長室の前につき、桐沢社長はあたしの横をスッと通っていった。
あたしはなぜだかわからないけど、桐沢社長の悲しそうな笑顔を見て自然と涙が出た。
胸がチクチクと痛んだ。
あなたが悲しいならあたしも悲しいの……。
なんであたし……こんなに桐沢社長が気になるの?
……教えてよ