― Summer Drop ―
第2話 はじまり
それから千夏の恋は、野球応援と情報収集以外の行動を起こせなかったことで、停滞を余儀なくされた。

あっという間に謙太をすきになって一年が過ぎ

中学三年生の七月を迎えた。



手芸部の活動場所である被服室で、今日のホームルームで配られた進路調査票を取り出し、溜息をつく。

志望校を記入する欄は空白のままだ。

「千夏ー元気ないね。……まぁ気持ちは分かるけど」

「千夏ちゃん、やっぱ西高目指すん?」

向かいの席に座った朋子と松田真白が、千夏の手元にある用紙を覗き込む。

「つきこ、はくちゃん……」
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