― Summer Drop ―
千夏は、話題にされていたピッチャー、川原謙太から目が離せないでいた。

あんなに真剣な顔を、同じ歳の男の子がするんだ、と思った。

座っているだけで汗が滲む暑さなのに、そんなこと全く感じさせない。

真っ直ぐに前を見て、振りかぶって、投げる。

その滑らかな動作の間、息をすることも躊躇われた。

その一球で南中はスリーアウトとなり、攻守が交替する。

走ってベンチに戻った謙太は、先輩に話しかけられ、

ピッチング中の恐いくらいの真剣な表情とはまるで違う

照れたような笑顔を見せた。
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