花粉症の男性が出会った植物
翌日、起きて見ると植物の異変に気付いた。

昨夜、葉っぱは淡い色だったのが、今ではハッキリとした緑色になっていた。

「コレ…栄養のおかげ、か?」

にしても、あまりに激変過ぎる気が…。

でもまあ、悪いことじゃないよな?

オレは気がかりになりながらも、会社に出勤した。

そして帰り道、あの男へ会いに行こうと思い、裏道を歩いた。

しかし、男はいなかった。

「今日は来なかったのかな?」

路上だし、そういうこともあるだろう。

オレは家に真っ直ぐに帰った。

そして水をやろうとした。

しかし予想以上に針を深く刺してしまい、血は3滴ほど水に入ってしまった。

「やばっ…。でも説明書には多くやるなって書いてないよな?」

改めて、説明書に眼を通す。

【④お客様が与えられた血の量に応じて、植物の成長は変わります。お客様のご希望を受け、美しい姿を見せてくれます】

「…なら、平気か」

オレは大して考えず、水をやった。

「この調子の成長なら、そろそろつぼみの一つか二つ、見ても大丈夫そうだな」

買った時に咲いていた花は、すでにしぼんでいた。

他のつぼみはまだ、葉っぱと同じ色をしていて、触ると固かった。

けれど昨夜よりは格段にふくらんでいる。

「…どんなふうに咲き誇るのかな?」

昨夜の一輪の花では、花粉症は起きなかった。

けれどあの花はあまりに小さ過ぎる。

この植物の形態であれば、小さな可愛らしい花がたくさん咲くのだろう。

その時が楽しみだ―そう思っていた。

この時までは。

< 4 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop