宝石よりも
「何してるんだよ、こんなところで」
不機嫌そうな声が波の打ち寄せる音に混じって聞こえてきて、俺は目を開けた。
「邪魔しないでよ。一人の世界に浸ってたのに」
夜だというのに野球帽を頭に乗せている直樹を振り返った。
パーカーのポケットに手を突っ込んで、直樹は少しむっとした顔をした。
「何か用?」
砂の上に腰を下ろしながら尋ねた。
直樹がわざわざ俺に会いに夜の海にくるなんて、何か用があるに違いない。
直樹は帽子を取って、彼もまた腰を下ろした。
「いなくなっちゃったんだろ、彼女」