天然彼女の愛し方(完全版)



空は少し暗めの薄墨色

そこから降ってくる雪は驚くほど白い




「はぁー…」


そして
この少年の吐き出すため息も…なんだか白く見えそうだ





「【3年生を送る会】なんてなくなっちまえばいいと俺は思う」

『急になんだよ…』



今日は
珍しく部活が休みの日だ


それだというのに
委員会に所属している春華は間近に迫った【3年生を送る会】の準備で帰る時間が遅いらしい




「春華とデートできない」

『お前、ほんっと春華ちゃんに骨抜きにされてるよな』


呆れ顔で呟く颯太も
今彼女とメールをしているのだから人の事は言えないと思う



『廉ってさ、普段春華ちゃんと二人っきりのときってどんなことしてる?』


颯太の質問はいつも脈絡が無く唐突だ


答えてやる義理などないが
…まあ、暇つぶし程度にはなると思った


「春華は恥ずかしいから嫌って言ってるけど後ろからギュッてしたりしてる」


あの真っ赤になって目ぇ潤ませながら睨んでくる顔が見たいから
ついついやってしまう



『うぉー!わかる!男のロマンだ!
あの自分の腕の中に収まる感がいいっ!』


彼女がいないときは颯太のこの馬鹿騒ぎがよく分からなかったが

…今はなんとなく理解してしまう


相変わらず馬鹿だとは思うが



『俺はその後耳元で「亜矢」って言う
いっつもツンツンなのに俺のシャツとか握っちゃって顔真っ赤にして睨むのが
もう可愛くて可愛くて…!』



そこからずっと
颯太の惚気話になってしまった






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