天然彼女の愛し方(完全版)
朝
『桐生~!』
春華を呼び止める声が廊下中に響いた
隣で紙パックのジュースをすすっていた廉は怪訝な顔で春華と共に振り向いた
『あ、南条君…?』
春華が不思議そうな顔をした
これには訳があり、南条は中学の時のクラスメイトだという関係しかなく
クラスも違う今となっては接点が無いに等しいのだ
「・・・・・・」
正直
春華が男に声をかけられる時点でいい気がしなかったのだが
それもめったに無いことなので、どうせまた委員会等の事務的なことだろうと考えて
気を緩めていた
ところが
『ハヤトが今度の日曜日帰ってくるらしいんだけど
桐生仲良かったっしょ、何人か集まって遊ぼうってことになったけど行く?』
『えっ!帰ってくるの!?』
『うん、昨日電話した時桐生に会いたがってたよ』
その会話は中学時代の廉が知らない人物が中心
ものすごく不愉快だった
問い詰めたい気持ちに駆られたが
そんな自分が酷く子供に思えてジュースのストローを噛むだけに留めた
『たぶん大丈夫だって伝えといて』
しかも行くらしい
イライラがピークに達して、廉は春華を置いて先に歩き出した
後ろからまだ二人の声が聞こえるが
早く消え去るように早足で歩いた
『あっ、おはよー』
教室に入って挨拶されても無視をして
ゴミ箱に空のパックを乱雑に投げ入れて席に付いた