天然彼女の愛し方(完全版)


いつもと違う廉の様子に
春華は目に涙を浮かべて胸を叩いて廉を引き剥がそうとするが

廉は男である
そう簡単に引き剥がせない



確実に迫ってくる快感は恐怖にも似て

背筋の震えは止まるところを知らないのに、今日はそれを支えてくれる腕さえ無い



春華は渾身の力を振り絞って

廉のこめかみ辺りに拳を振り上げた



ガッと鈍い音がして

こめかみより少し上に当たった


その衝撃で正気に戻った廉は
唇を離すと呆然としたまま唾液に濡れた唇をぬぐった



春華は唇をぬぐう事もせず
涙を溜めて廉を睨んだ



『今の廉君、怖かった』



その言葉に
二度目の衝撃を受けた




「…ごめん、今完全に何かぶっ飛んでた」


ようやく気付いた


春華の肩が震えてることにも

自分が春華を抱きしめてさえいないことにも



…自分が春華の過去に嫉妬していることにも




今度は優しくあやすように春華を自分の内に抱きこんだ


冷たくなってた春華の手を自分の体温を分けるような気持ちで握る




「自信が無いんだ、こんな近いのに不安なんだ

南条や、顔も見たこと無いハヤトって奴…
春華に関わった男全てに嫉妬してる

こんなの初めてでどうしたらいいか分からなくてごめん」



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