天然彼女の愛し方(完全版)



『廉の性格が柔らかくなったのは春華ちゃんのおかげだと思う
昔に比べて人間らしくなったのがちょっと嬉しくて…』


こんなに綺麗に笑える女性に
私はなれるだろうか…?


愛されて、愛した幸せな女性

廉君ともいつか…



『あのね、これ』

すいっと差し出されたのは白バラを基調にした可愛らしいブーケ
紛れも無く式の間この人の腕の中にあったものだ


『廉がね、あなたに渡してって…』

「受け取って…いいんですか?」


震える手で受け取ったそれは、予想よりも重く感じた
ふわりと香るバラの香りがほんのりと顔の周りを包み込んだ



「ありがとう…ございます」

『もう、こんなときに廉はどこ行ってんのよ…泣いたらせっかくのメイクが落ちちゃうわよ』


今日も私の胸に光るのは廉君に貰った桜色のネックレス
廉君が私を想ってくれたもの




私は…廉君に何かしてあげる事ができただろうか?




『ちょ…俺がいない間に春泣かさないでよ』

『ええー、私のせい?
元はと言えばあんたが…』


どうやら親戚の子達と話していたらしい廉君が戻ってくると
泣いている私を見てあたふたし始めた


「だ、大丈夫廉君
…ちょっと嬉しすぎて」


ありがとう、と呟いた言葉は
廉君にしっかり届いただろうか?


『…俺らもう帰るわ、後適当に言っといて』

「えっ!?」


片手にブーケを持ったまま
いつもより高いヒールでおぼつかない足取りのままついていく


その様はまるで…



『ねぇお母さん
あのお姉ちゃんたちも花嫁さん?…』


後ろのほうで
そんな微笑ましいあどけない声が聞こえた




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