天然彼女の愛し方(完全版)



『…春香ちゃん、泣いてもいいんだよ』


零夜君が言ってくれる言葉の一つ



零夜君はとても優しい

何も話さなくてもそばにいてくれる


だけど
泣けない


自分でもなぜか分かんないけれど
廉君と別れてから涙を流したことが無い



優しい人たちがそばにいてくれたから?

まだ私が我慢をしているから?



…違う


分からないけど

違う





『それでさ、昨日気づかずに洗濯しちゃったからシャーペン使い物にならなくなったし
やっぱ安物だとすぐ壊れるよね』



零夜君の話は面白い


けれど
心から笑えない




…優香ちゃんに言わせれば
『まだ引きずってんの?あんな奴抹消してしまえって言ったでしょっ!』
って感じだと思う



だけど実際…まだ廉君が忘れられない

最初に逃げたのが信じられないぐらい
私が廉君を求めて追いかけようとしている


…だけど、まだ足が動かない

いろんな思いが積み重なって
がんじがらめになって

動きたいのに、動けない


こんな自分が嫌になる



『春華…』



ほらだって
今でも幻聴が聞こえるほど
私は廉君の事が…



グィッ









風が吹き
視界が反転した




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