【完】アニキ、ときどきキス
俯いたまま動かない遥。


ちっちゃな体がもっと、もっと小さく見える。

私はゆっくりと遥に近づき、しゃがんだ。


「遥、帰ろう?」


遥がゆっくりと私に顔を向け、何かいいたげに唇を小さく奮わす。

遥は小さく頷いた。


山田先生の車に乗り込み、遥が暮らすアパートへと向かう。

車の中でも遥は黙りこくったまま。



アパートの前に着くと、何も言わず車を降りた。


「山田先生、ありがとうございました。
私、少し遥の話し聞いてから帰りますね」


「そうですか。
暗いですし、帰るときはいつでも電話ください」


「大丈夫ですよ。
ここからなら家も近いですし」


「はい・・・・・・じゃあ、僕はこれで」


山田先生は寂しそうに微笑むと、車の窓ガラスを閉め、走り去っていった。

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