【完】アニキ、ときどきキス
カツンカツン


鉄で出来た頼りないアパートの階段を遥の後ろから昇る。

遥が首から提げていた鍵を外し、ドアの鍵穴にガチャリと差し込む。


キイっと静かな音を立てて部屋の扉が開く。
真っ暗な部屋・・・・・・。


「入っても・・・いいかな?」


遥は少しだけ後ろを振り向くと、コクンと頷いた。



部屋に入ると、ほのかに香水の香りがした。

シトラスのようなさっぱりとした香りだけど、なんだか甘い。
そんな香りだった。


部屋の中は殺風景で、モノトーンにまとめられていた。

不釣り合いな木でできた勉強机。


私が部屋をキョロキョロと見回していると、遥がガラスで出来たテーブルの上にお茶をのせてくれた。


「どうぞ」


「あ・・・ありがとう」


遥の声はいつもよりも低く、沈んでいた。


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