【完】アニキ、ときどきキス
「何度も?」


「ええ、遥の万引きは去年から続いててね。
これで5度目です」


「そんなに!?」


「・・・・・・何も聞いてませんか?」


「はい・・・・・・」


「そうですか。
言いにくいですが・・・やはり家庭の事情もありますし、このままだと児童自立支援施設行きになってしまいますよ」


「そんな・・・・・・!」


「脅すわけじゃないですよ。
遥は根っから悪い子じゃない。
優しい子だ。
今日だって新・・・・・・お兄さんの仕事邪魔したくないからって、連絡しぶってた。
遥だってお兄さんとは離れたくないだろう?
・・・・・・なんなんだろうな」


尾崎さんはパタリと手帳を閉じ、私の背中をボンと叩いた。


「とにかく、今はあんたが担任だ。
もっとあの子のことみてやってくれ」


尾崎さんは私にそう伝えると、遥がいる部屋の扉を開けた。


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