君の詩を聴かせて



 背が低い琉愛には人混みはきつかったかな。


「…編入生」

「…それがどうかした?」

「…さっき見た」

「…ふーん」


 琉愛は朝職員室に呼び出されて、そのときに編入生を見たらしい。

 呼び出し…服装のことかな。

 相変わらず校則違反だらけだし。

 心機一転なのか、今は髪が前よりも赤い。

 赤茶じゃなくて赤にしたみたいだ。

 そう言う俺も、また染めてもらったんだけど。

 今はもっと明るくしてアッシュブラウン。

 言うなれば…そう、ヒグマの毛の色。

 まあこの色も気に入ってるんだけど。

 教室のドアに近付く。

 隣の隣、つまり4組には人が集まってるみたいだった。

 4組…ああ、編入生。


「大和、あとで4組行こーよ!」

「4組?何で?」


 腕を絡めてきた葵に聞く。

 例の編入生見に行くのかな?

 こしょこしょと小さな声で言ってくる。


「だから……ね!」

「…別にいいけど。
 ちゃんと挨拶はしなよ?」

「りょーかい!
 じゃああとで行こーね!」

「はいはい」


 頭を撫でる。



< 93 / 104 >

この作品をシェア

pagetop