ヒレン

突然に

それから怒涛のように月日は流れ、国家試験も終り、後は結果を待つのみとなった。


「和くん。あのさ、話があるんだけど」



「?ああ」



少しずつ春を感じるようになったこの日。勇気をだして私は切り出した



「結婚なんだけどさ、研修が終わるまで待ってくれない?」



「…ああ。実は俺もそう思ってたんだ。一人前とまではいかなくても自分の足で立てるまではって。俺のほうこそ待ってくれるか?」




「うん」




ごめんね。




まだ、あなたに鍵は渡せない。


好きだから



好きだから




貴方が好きな私だけを見ていて欲しい。


もう少し



もう少しだけ時間をください。



ただ、そう願った。



この日が後悔に繋がるとも思わずに…




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