ヒレン
案内されたのは病院の地下にある霊安室


「…搬送されてきたときにはもう…」


白布をめくると、綺麗な和くんの顔があった。

死んでいるとは思えないくらい…


そっとその頬に触れてみる
冷たい…

その冷たさに触れるのは初めてではないのに、名前の無い感情が身体を支配した


「和くん、和くん」


悲しいのに…


辛いのに…


涙は出てはこない



力が抜けていく。

夢なら覚めて。


悪い夢だよね。



早く覚めてよ。


「和真…」


「シンちゃん。夢だよね…叩いてよ。覚めると思うから」



「チコ」


ギュッと抱き締められた。




確かな体温…



シンちゃんの瞳から肩へと落ちてくる熱くて、冷たい雫



手を伸ばして和くんの頬に触れてみた。


……冷たい…




抱き締められている腕の強さは痛いくらい



…痛みがあるということは





…夢じゃないってことを教えていた。




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