ヒレン
「っ、いつかこうなるから」


本に倒される形で床に座り込んだ。


「ご、ごめん。大丈夫?」


本を拾いながら秀明の元へ駆け寄った。

その振動でカップが音を立てて揺れていた。

秀明は智子の腕を掴み自分の方へ引き寄せた。

後ろで紅茶がこぼれる音がする。吐息がかかる。


「ご、ありがとう」


秀明は立ち上がろうとする智子を引き寄せて膝の上に座らせた。


「何?」


その先を塞ぐ様にキスをした。


「う、もう、苦しい」


そう言って秀明の体躯(からだ)を突き放した。


刹那、抱きしめられる腕の強さがました。



< 14 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop