ヒレン

旅館

「じゃあ、先行ってるね。優太」



「ああ」


玄関でもう1度キスをすると、舞子は旅館へと向かって歩き出した。



裏口から入ると、すぐに事務所へと向かう。中に入ると女将であり母親の瑛子がいた。



「舞子。お帰り。疲れているのにごめんね」



「うんうん。ただ今お母さん」


「はい。これが今日の宿泊名簿」


そう言うと瑛子は慌しく部屋を後にした。名簿を確認すると舞子は正面玄関へとでた。



「遠いところようこそお越しくださいました。本日は翠風閣をご利用いただき誠にありがとうございます」




フロアに立つと自然に言葉が出てきた。凛とした空気。

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