刀人―巡りめく戦乱の中で―

―質―

森の中をまるで平地を走るかのようにグングンと景色が変わって行くのを祭はただ呆然と眺めているだけだった。

皆を助ける事しか頭になかったが、それが達成された今、これから私はどうなるのだろう。
手籠めにされ、しがない女として扱われるのだろうか。
それよりも気になってしまうのは須江長の民の事。

……じぃ達は上手く相手方に渡せたのだろうか。

そちらの事の方が心配してならない私は、やはり生きる気力を失っているのだろうか。それとも”姫”としての役割がなくなってしまったからなのか。

どうすればいいのか分からない。


吉良や父上が死んだ今、祭に生きる希望はなかった。唯一四十万にあの刀を受け取って貰う事、そしてじぃ達が須江長の国を守ってくれる事だけ、それだけが祭の願いだった。


ふと重祢の足元が止まったと思うと、景色が暗転して鈍い痛みが腰元に広がる。

「痛っ……」
「おい、着いたぞ」

目的地に着いたとばかりに重祢は乱暴に祭をその場に落としたのだった。

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