刀人―巡りめく戦乱の中で―
この男は力加減というものを知らないのだろうか。

「此処は?」

辺りを見回すが見慣れたものは殆どない。扉が一枚、地面には何処からか頂いてきた金目の物が沢山転がっていて、脇には恐らく男が脱衣したものが纏めて転がっている。

部屋が薄汚れている訳ではないのに、何故か汚いという形容詞が良く似合う。

「俺らの拠点でここは俺の部屋だ。それにしても……その格好だと動き辛くねぇか?」
「えぇ、何しろ輿入りの最中でしたから」

白無垢に心にもない皮肉を込めるが重祢は特段する様子もなく、寧ろ可笑しそう笑う。

「ほー、それにしては浮かない顔してたようだが?」 
「…………」
「ま、何でもいいが、取りあえずこれに着替えな。俺はこれから少し用ある。直ぐ戻るが……逃げたらどうなるか分かるよな?」

そう言って目の前を何かが覆ったと思うと、ずしりと布のようなものが頭から被せられた。

視界を開くように重みを取り除けば、それは実家から持ってきた祭の着物であった。


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