ソレデモワタシハアナタヲアイス
「サキ、行きたい学校あんだ?」
隣を歩くソラからは、もうさっきの驚きは消えていた。
いつの間に、ソラはこんな余裕のある表情を私に向けるようになったのだろう。
出会った頃は、ただの負けず嫌いで、くだらない事で私に食ってかかって来ていたのに、今、私はそんなソラに真剣に相談をしようとしている。
「ソラは、美容師になるんでしょ?」
私は、チラリとソラを見た。
「うん。って今は俺の事じゃなくてサキの大学の話しだろ?」
話しをそらされたと思ったのか、ソラがすかさず切り返して来た。
「で、真由子が幼稚園の先生でしょ?」
私は、先が読めないという顔をするソラにかまわず続けた。
「私、何にもなりたいものないんだよね。大学も適当に選んだし」
ソラは、話しの終わりを予想しているようだった。
「だから考えてみたんだよね。今、私がやりたい事。そしたら今は、写真が好きなんだと思ったワケよ」
ソラは、急かす事もなく、ふぅーんと相槌を打った。
「東京に写真でちょっと有名なとこがあって、今、いろいろ調べてたんだけど…」
相槌しか返さないソラに、私は言葉が詰まってしまった。
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