ソレデモワタシハアナタヲアイス
「誰か好きなヤツ居るの?」
不覚にも体がビクリと反応してしまう。
美咲に好きな人が居るかどうかなんて考えた事もなかった。
「本郷さん?」
さっきまで即答していた美咲の返事が聞こえない。
俺はその答えを聞きたいような聞きたくないような矛盾にかられた。
この状況では第三者、むしろやじ馬のくせに俺の心臓はバクバク言っている。
「…居ません」
少し沈黙をおいて美咲はやっと答えた。
急激に動いた心臓のせいで熱を持った体が、スーッと元の体温に戻って行く。
美咲にとって俺は何でもないただの友達だという事が、今、美咲の口から発表された。
「考える」なんて言われて少し希望を持っていた自分がバカらしく思える。
そのうち俺もアイツみたいに容赦なくフラれて、友達としてもギクシャクして、やがては友達でも何でもなくなるんだと、近い悲劇の未来を想像した。
―――戻んなきゃ―――
上の空で部活中に飛び出して来た事を思い出した。
ずっとくっつけていた壁から背中を剥がして戻ろうとすると、角の向こうの相手がまた攻撃を始めた。
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