Star Dust ~星のカケラ~
「ここに来てから1度も笑ってないだろう」


1ヶ月。短くて長かった。

日常生活に魔法が溶け込んでいることは科学文明育ちの柚子には考えられない日々であった。

何より…


「ね?私が天使なんだよね。何もしなくていいのかな?」


「…まだ、何も、守護獣を目覚めさせる方法や、天使について詳しいことがわからない。そんな状態で異世界から来たユズを巻きこむわけにはいかない」


「でも…」


城下、ロザリーさんの下で暮らすようになって町の状況を知った。

父親を魔物で亡くした子どもが沢山いた。


魔物の討伐に男手を繰り出されて困っている人たちも…


まだ自分のことが公表されていないため、人々は天使が現れれば…と口にしていた。



前王の時代を知る人は、天使 ミカンにどれだけ救われたかを御伽噺のように子どもたちに語り聞かせている。


救いたいと思う。


新しくやってきたばかりの私を温かく迎えてくれた町の人たちを、この国を。



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