溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「瞳さん…透子ちゃんのお母さんを嫌いじゃないけど愛せなかったのは確かなの。
竜臣くんは、その気持ちだけは変えられなくて離婚を決めたの。
その方がお互いにいいって話し合って。

でも、やっぱり自分の子供だもん、産まれた瞬間から透子ちゃんを愛してた。

その時の嬉しそうな顔は覚えてる。
大切で仕方なくて、透子ちゃんの為なら何でもするって言って抱きしめてた」

「え…?私が産まれた時…弥恵さんは…」

「私は、竜臣くんとは小さな頃から一緒に育ってたから家族みたいなもので…竜臣くんの両親と一緒に病院に赤ちゃんだった透子ちゃんを見に行ったのよ」

声音の穏やかさは変わらないけれど、ふと外した視線にはどこかつらそうな重さが感じられた。
その違和感がなんなのか…。

すぐにはわからなかったけれど…。

なんとなく、浮かんだのは。

「弥恵さんはずっと父が好きだったんですね」

そう。

幼なじみなんて言葉で説明しているけれど、弥恵さんはきっと父を好きな気持ちを抱えたままに側にいたんじゃないかと気づいてしまった。

「私の母と結婚してしまった父の側にいたんですか?」

「…そうね。気持ちは近くにいたかもしれないわ…。瞳さんと暮らし始めた竜臣くんは不安定だったから…いつも気にかけてた。それでも、やっぱり人のものになっちゃったから…直接会う事は滅多になくて。
私も諦めようと思って結婚を決めたの」

つまる事なく淡々と話す弥恵さんは、当時を思い出すように目を細めた。
綺麗な人だから、昔から目立つ人だっただろうと思う。
母さんよりも落ち着いていて優しさもにじんでいて。
父は弥恵さんをどう思ってたんだろう。

私自身への父の想いを知りたくて始めた話だけど
同じくらいに父と弥恵さんの繋がりに興味を持ってしまった。

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