溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そっと向けられた弥恵さんの視線は、思いがけなく悲しい光が揺れている…。

暖かさと穏やかさを私に与えてくれていた弥恵さんの変化に、戸惑ってしまう。

「ごめんなさい。
私のせいだと思う。

確かに有二さんに遠慮して…透子ちゃんの気持ちも混乱させたくなかったのもあるけど。

ごめんなさい…」

途切れがちな声はか細く響いて私の気持ちにもせつなく聞こえる。

「私ね…竜臣と結婚してから二度流産してるの。もともと妊娠を継続しにくい体質だったみたいで…。
結局子供に恵まれる事はなくて、本当にかなしかった」

落ち着いて言葉をつなぐ弥恵さんの手は微かに震えてる。

「そんな私にすごく優しくしてくれて、竜臣はずっと支えてくれたの。

その頃から…透子ちゃんの話もしなくなった。
多分、子供を持てないだろう私を気遣ってだと思うの…。

透子ちゃんと竜臣を引き離してしまってごめんね」

軽く頭を下げる弥恵さんは本当に申し訳なさで溢れていて、肩が小さく見えて震えてる…。

この人は…どれだけの切なさを抱えて長い間父と一緒にいたんだろう。
母でも弥恵さんでもない女性を愛しながら結ばれる事のなかった父をずっと慕いながら愛し続けて。
母と結婚して私という子供を授かった父を尚も愛して支えた強くてまっすぐな人。

今の今でもまだ、私への謝罪を続けてる。

でも、ある意味父を捨てて子供である私を取り上げた母よりも毅然としていて憧れる気持ちにもなる。

私がそう思えるこの女性を父が愛してくれて良かった。
二人が並んだ姿は見たことないけれど、きっと…
想像するままに幸せだったんだろうな…。

そんな思いがけない感情が嫌でないと気づいて、小さく息を吐いた。

「大丈夫です。私は弥恵さんの事は…わかるつもりです…」
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