溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そう声をかける私には、どうしても確認したい事があった。

「父は、私の為に設計デザインコンクールに出品して…大賞をとったって母に聞かされました…。それは…本当なんでしょうか」

ずっと心にひっかかる重い疑問。
父が亡くなって、その事実に気持ちは右往左往しているままに過ごしていた私。
出張中の濠には何も言えず。
たとえ電話がかかってきても、混乱している状態を悟られないように…濠がいらない心配をしてしまわないように、普通にしていた。

抱えこむにはあまりにも大きな悲しみや切なさや混乱を、一人きりで消化できずにいる私を見かねた母さんから聞かされたのは。

『透子の心臓の手術が成功するように、コンクールに参加したのよ。

小山内くんは…コンクールには興味なくて参加する事を嫌がってたんだけど…透子が助かるように
自分が嫌だと思うコンクールに参加したのよ。
透子もつらい思いしてるから、自分も頑張って大賞とってやるって。

手術が決まって私が連絡したあとに…決めたって言ってた』

そう聞かされた後にたどってみたコンクールの歴史。
過去の受賞者達の名前を確認する私の目に入った

『小山内竜臣』

の名前。
確かに、あった。

それも私が手術を受けた年の受賞者として。
授賞式の壇上に表情に乏しい淡泊な姿で立つ写真も載っていた。

立ち姿が妙に私に似ているように思えて複雑だった。

そして。
もし、望んでコンクールに参加したのならもっと喜びに満ちた表情を見せていただろうけどそうじゃなくて、どこか意識が他に向いているその顔には。

コンクールには参加したくない

という気持ちが表れてるのかと思えて悲しくなった。

本当はコンクールになんて大切な作品出したくなかったんだよね…。

私の為に自分の気持ちを曲げたんだよね…。

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