溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「透子ちゃんが手術を受けるって瞳さんから連絡があったのは…お正月が明けてすぐだったかな…。暖かくなって、透子ちゃんの体調をみながら夏までにはって話で」

思い出すようにゆっくりと始まった弥恵さんの話は、母さんからあらかじめ聞いていたとはいっても切なくて苦しくて。

もう会えない父への申し訳なさと感謝の気持ちで体中溢れてしまった。



【小山内竜臣】

という名前は、かなり前から広く知られた名前。

設計を職人気質で完璧にこなすのみに力のすべてを注いでいたらしい。

大学で建築を学んだ後設計事務所に入りあらゆる仕事を受けてきた。

基本は戸建住宅で、人に優しく機能的な設計はかなり評判になった。

当時、設計デザインコンクールで大賞をとった
人達の中には相模さんの奥さんのご両親もいたりして、同年代の父も何度も参加を勧められたらしい。

その度に、断り続けていたのは、単純に自分の作品を他人の評価にかけられたくないから。

自分は依頼者が幸せに生活できる手助けができるだけでいいと、その意志をずっと貫いていた。

大賞をとったあとに控える忙しさもコンクール参加を躊躇させていたらしい。

そんな父だけど、私が命を落とすかもしれない手術を受けると聞いて、相当心配した上に簡単に会いにいけない自分の立場に落ち込んだらしく。

コンクールに参加する事で私の手術が無事に終わるように願掛けをした。

自分が苦手だと、嫌だと思う事を受け入れて私が助かるように願いをこめて。

『健康な体すら与えてやれなかった』

と自分自身を責めながら
一生懸命作品を作って。

そして…願掛けは実り私は無事に手術を終えて。

ちょうど手術を受けた日は、父が大賞の授賞式でフラッシュを浴びた日。

そんな昔の話を時々涙でつまりながら…
弥恵さんはしてくれた。
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