溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「妥協しなくて良かった」

「…え?」

濠の姿に不安を感じながら、ただ見つめていると不意に聞こえた濠の声。

妙にあっけらかんとしているのに戸惑った。
側に近づいてそっと顔を見ると、どこか苦笑しながら新聞の写真に視線を落としている。

私が予想していたのとは違う温かい瞳。

「俺にはちょっと無理めな指輪だったんだけど。透子に似合う指輪はこれだと思ったんだよな。

…やっぱりこれで正解だった。
結構目立ってるし、透子を愛する恋人がいるってアピールしてる…」

そう言うと、私の左手を取って、薬指に光る指輪に口づけた。
その仕種は軽くてあっさりとしたものだけど、与えてくれる想いは重い。

「…ちゃんと指輪していってるから、何も疑ってないし安心しろ。
第一、俺以外に気持ちを揺らすなんて透子にできるわけないしな。

もしそんな事があっても俺が手放すなんてありえない」

くくって笑う濠には、余裕が見えて私にはありがたいけれど、それでも心の奥には私への不満もあるに違いない。

私が不安にならないように笑ってくれている…。

何があっても手放さずにいてくれる。

そう言ってくれる濠に握られている左手が、普段以上に熱く感じる…。

薬指に光る指輪だって、愛情と未来への印に違いなくて、単純に嬉しいって感じてたけれど。

濠にとってはかなり悩んで頑張って用意してくれた大切な物に違いなくて…。

わかってるつもりでわかってなかった自分が情けない。
先週濠からの宿題に振り回されていたのは確かで、他にも考える事はたくさんあったけど…それは言い訳にはできない。

左手に光る指輪をためらいなくはめている私には、濠が指輪に閉じ込めた想いを全てわかってなかった。

この半年に私が濠に与えてしまった悲しみや不安を抱えながらも、ただ私には愛情だけを注いでくれた濠…。

今も目の前で笑ってるけど、本当に、濠は幸せなのかな…。

離れるなんてできないけれど…。

それが…私が濠の側にいる事は、濠には幸せ?
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