溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
濠の存在が、まだマスコミに知られていない今は、濠の部屋で生活するのが一番安全だということで。
「この土日は真田くんのところにいた方がいい」
相模さんからのメール。
改めてそう言われなくても、ずっと濠の部屋にいるからあまり生活は変わらない。
ただ、会社を休むわけにもいかないから月曜日以降はどう展開していくのかはわからない。
しばらくぶりに濠と二人でゆっくり過ごす週末は、今まで当たり前に思っていた事がどれだけ幸せな事かと実感するには十分で。
同じ部屋にいながら濠の体温を感じて、穏やかになる。
午後に入って、部屋の掃除も終わった頃、濠が着替えてきた。
会社に行くようなスーツを着ている。
「…仕事?」
「いや。もっと大事な事。透子も出かけるから準備しろ」
「え?どこに?」
訳がわからなくて思わず聞き返した私に、大した事でもないように肩を竦めると。
「役所。これ出すから」
手にしていた紙を広げて見せた。
…婚姻届。
「あ…それ…」
濠が出張中に記入し終わっている婚姻届。
夕べ部屋に戻った途端に取り上げられた。
二人とも記入すべきところはすでに記入し終わっていて、あとは提出するだけ。
保証人は、弥恵さんと。
濠の大学時代からの友人の野崎さん。
「健吾には、どうしても立ち会って欲しかったんだ。
…透子を探すのに疲れて諦めたくなった時に、笑って気持ちを繋ぎとめてくれてたからな。
健吾の方がつらい過去を抱えてたのに」
はは…っと笑いながら照れを隠してる。
野崎さんと濠は、二人とも大学時代を切ない気持ちで過ごしていたという共通点がある。
私が心臓の手術の後濠の前から姿を消して以来、ずっと私を探しながら気にかけながら、再会を信じていた濠。
それでも単純に私だけを待っていた訳じゃなかった事は聞いている。
見た目に惹かれて近づく女の子とそれなりの付き合いもしていたと。
…いい気分じゃない。
正直に伝えられたのは再会してすぐだった。
気持ち全てを預けられる付き合いをした女の子はいなかったらしいけれど。
それでもやっぱり寂しかったし嫉妬もして泣いた事もある…。