溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そう。

一番怖いのは。

また同じような朝を迎える事。

眠りから意識がさめて、それでも何も聴こえなくて途方にくれる朝。

「原因がわかれば、予防もできるし覚悟もできる。効果のある治療を受けて、薬だってのんで…できるだけの事はする。
だけどな、どうして発症して、そして治ったのかがわからないから…どうしようもないんだ」

一息に話した俺の腕の中で、透子はゆっくりと体を起こすと、普段見せる淡い感情をたたえた表情とは違う、はっきりと笑っているとわかる瞳を俺に見せた。

…は?笑ってる…?
声は出さないけれど。

上がった口角からは笑み以外は感じられない。

「…透子…?」

「愛だね。愛。それしか考えられない」

くすくすと笑いながらそう言うと、俺の耳元に顔を寄せて

「私が倒れるのを見て思わず声が出たなら…私を愛していたから…好きだから…声が出たんだよ」

「…は?」

「医学的にどうとかはわからないけど。
私への愛が濠の耳を治したんだと…たとえ奇跡だとしても、それでいいんじゃない?」

「…いいんじゃないって…」

やたら明るく耳元に落とされる透子の言葉が染み入るけれど、思ってもみなかった考えに、戸惑いを隠せない。

確かに透子をずっと愛しているし、あの日…透子が倒れた瞬間から愛なんかじゃ表せないように想いを膨らませてきた。
そんな気持ち故に耳が聴こえるようになったと…
あっけらかんと透子に言われても。

だとしても、まだまだ不安は消えない。
いつ同じように音のない世界に戻るか…戻らないのか…わからない不安定な毎日は続く事に変わりはない。

「原因がわからないから…だから、また聴こえなくなるかもしれないんだぞ?
あの頃…病院で会った頃みたいに、また荒れて情けない俺になって…透子を守れなくなるかもしれないんだぞ」

じっと視線を絡ませたまま諭すようにゆっくりと。
わかってるんだろうか…。
俺がずっと抱えていた不安を…透子は理解してるんだろうか。

「これからずっと、私が側にいるから大丈夫。
私への愛情が、濠の耳を治したのなら、もう大丈夫。
私を愛している限り、たとえまた聴こえなくなっても治るから」

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