溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~




触れるだけのキスだけど、私には今までのどんなキスよりも深く感じた。
濠の気持ちと私の気持ちがようやくかみ合って、キス以上のつながりを与えられた気がした。

これまでも幸せだったけど、もっと強い幸せがあったんだと体中が騒いでる。
求めていた濠の愛情を、ただそれだけを切ないほど求めて。
罪悪感なんかない、ひたすら私を愛して欲しいっていう願いは叶って…。

ううん…。
叶っていたのに、気づかなかっただけだった。
私への罪悪感を抱えながら愛してくれてるって一人で悩んでた。
濠と体を重ねても完全には溶け合わない気持ちを持て余したり。

それは、違うのに。

私が一人悩んでいた事は全く濠の背負ってきた不安とは比べものにならない。
私に際限ない愛情と束縛を与えてくれながら、いつ音のない世界に再び落ちてしまうのかって不安と闘いながら…私には強い濠しか見せなかった。

原因不明ほど心細いものはないから。
どうして耳が聞こえなくなったのかわからない恐怖に潰されそうになった事も一度や二度じゃないはずだろうし、それに加えて私にそんな不安を悟らせない気力だって必要だったはず。
その気力は私が察する以上に濠の心身を疲れさせたに違いないし…。

森下先生から彩香ちゃんとのお見合いの話をすすめられた時の嬉しさは…かなりのものだったんだろうな。
濠の耳の状態を誰よりも把握している人の大切な娘さんとの結婚。
それは、濠の耳が安定しているっていう事だし結婚しても相手を幸せにできる何よりの証拠。

私との結婚への『免罪符』だと濠が受け止めても責められないのかもしれない。
ずっと私と結婚したかったのなら尚更。
ここ最近のあらゆる準備周到な濠の行動を振り返れば、『免罪符』のおかげで錘のとれたに違いない素早い展開も納得できる。
さすがに今日入籍するなんて今でも実感わかないけど。

再会してから我慢してきたに違いない望みを現実にするために、爆発したように動いてくれたのも簡単に想像できる。
結婚するために亡くなった父さんの事も、私が近くに感じられるように弥恵さんに会ってくれたりもしたし。

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