溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
『初めまして…』

から始まる文面を、後ろめたさを感じながらも読んでいくと。

『透子さんのお父様が
亡くなられました』

と続く文面に目がくぎ付けになった…。

透子の父親…?
は美容室を経営していてかなりの知名度と技術でお店には予約が絶えないと聞いているし…。

先週透子の定期検診に付き添って病院に行った時にも会っている。

『俺より早く死なないでくれよ』

仕事柄若く見えるだけでなく気持ちも年齢よりずっと若い笑顔で透子の頭を撫でる優しい人。

…透子の父親…。

あ…。

そうだ…。

透子は実の父親とは産まれてすぐに別れたと…。
両親の離婚で離れ離れになって会った事はないと言ってたな。
じゃ、この手紙…
実の父親が亡くなったってことか…?

はっと思い当たったその事が、一瞬にして俺の心を固くして、心拍数も上がる。

手にした手紙を読み進める恐さを感じながらも、視線を落として、文字をたどった。

『透子さんが、偶然にも同じ建築の道へ進まれた事を誇りに思いながら、安らかに眠りにつきました』

何度も読み返しただろう手紙のしわや…涙のあと。

透子にとってどんな意味をもつのか…わからない自分にもどかしさを感じながら。

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