Parting tears ~another story~
第五話 やっと逢えた
 ようやく結麻に逢えたのは、高校を卒業したばかり、十八歳の冬だった――。

 久し振りに皆で遊ぼうという話しになり、美久が結麻を誘うと云ったらしい。

 俺は心臓が壊れるのではないかと思えるくらいドキドキしていた。この時をどれほど待ち望んでいただろう。十三歳から、結麻を初めて見たあの日から、いつか逢えたらと願ってきたのだから。


 今西が美久の車を運転し、俺は助手席、後ろには隼人と美久が乗っている。

 結麻を迎えに行き、車に乗り込んで来たのだけれど、俺は緊張して一度も振り返れなかった。今西は真っ先に振り返り結麻に声をかけている。そんな今西の性格が羨ましい。


 車が夜の海に向かい、発進してから結麻の楽しそうな笑い声が聴こえた。俺はもうそれだけで嬉しくて、自然と俺の口からも笑いが漏れる。

 早く結麻の顔が見たい。やっと逢えたんだ。俺はもう嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。あれから五年、結麻はどんなふうに成長したのだろうか。五年経った結麻の顔を想像しながら浮かれていた。けれども美久の言葉で一瞬凍りつくことになる。

 結麻には彼氏がいるらしい。いて当たり前だろうけれど、少なからず俺にはショックだ。追い討ちをかけるように、今西は隼人と結麻に「付き合っちゃえ」なんて云う。でも、俺には結麻の声のトーンで困っているように感じたから、違う話題を振ることにした。
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