Parting tears ~another story~
 何とか話題も変わり、車は海に到着した――。

 海岸に降りる階段に座った時、ようやく結麻の顔が見れた。十三歳だった美少女は、大人の綺麗な女性に変わっている。相変わらずハーフのように色白で、目鼻立ちがくっきりしており、端整な顔をしていた。想像以上に綺麗で、俺の心臓はまたしても高鳴る。

 しばらく皆で盛り上がっていたのだけれど、結麻がトイレに行くと立ち上がった。俺は二人きりになれるチャンスを見逃すまいとして、俺もトイレに行くことにした。

 結麻と並んで歩くと、女性にしては背が高くすらっとしている。その横顔をずっと見ていたい衝動に駆られながら、俺は平静を保ち話しかけた。

 男子トイレと女子トイレに分かれたのだけれど、俺はただ結麻と二人になりたくて来たので、結麻が出てくるのを待っていた。

 そして皆のところに戻る際、結麻の誕生日まで知ることが出来たのは、結麻の話す言葉を全て記憶していたお陰だった。それだけ俺は結麻の虜になっているということだろう。


 皆のところへ戻ると、また盛り上がったのだけれど、またしても今西と美久が、結麻と隼人をくっ付けようとしている。その時、俺は結麻の表情一つ一つを見ており、本当に困っているようだった。それに、笑っているのに何処か寂しそうな表情。明るく振舞ってはいても、独りぼっちのように見える結麻が、俺は愛しくて堪らなかった。


「そろそろ帰ろうぜ」


 俺は帰りたくない、もっと結麻と一緒にいたい。そう思ったけれど、話題を変えたいがために帰ろうと云ってしまった。

 結局携帯の番号を訊くことも出来ず、結麻を送り、車から降りる時までうじうじするしかなかった。

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