Parting tears ~another story~
 獅子座流星群の夜から、俺は仕事を辞め、結麻を監視する日々を送った。

 もう誰にも結麻を取られたくないし、俺だけの女でいて欲しかったから……。

 食欲はなくなり、俺は結麻を独占することしか頭にない。

 そんな時、結麻がどこかに出かけて、なかなか家に帰って来なかった。俺の頭の中では、結麻が他の男と会っているのではないかということしか考えられなくなっていた。

 そこへようやく結麻が帰ってきたのだけれど、家の前で待ち伏せしている俺を見つけ、走って逃げたのだ。俺は頭に血が上り、夢中で結麻を追いかけた。

 そして無意識に怒鳴りつけ、結麻の首を絞めてしまい、苦しそうな結麻の顔を見て俺は我に返った。一体何をやってるんだ俺は……。こんなふうにしか結麻を愛することが出来ないなんて、自分で自分が嫌になる。
 
 結麻は俺がプレゼントした指輪を外すと、別れの言葉を云った。

 心臓が止まるのではないかと思うほど怖い言葉に思えた。

 別れたくない。こんなにも結麻だけを愛してきたのに、こんなにも結麻だけを見ているのに、どうして分かってくれないんだ。あまりにも酷いじゃないか、別れるなんて許せないと思った。

 その時の俺は自分の気持ちばかり押し付けていたのだろう。

 アスファルトに崩れ落ち、結麻が去って行く後姿を見ながら、俺の涙が止まることはなかった。
 
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