幸福論
まぁ、そんな感じで1年半近くをすごしてきたわけだけど、3年生が部を引退する時期に、和美があたしを再び演劇に誘ってきた。

「別に入部しろなんていわない。だけど、台本を書いて欲しい。」

和美は、この時も誠実だった。
決して、あたしに無理強いさせたりはしない。

「あんたの台本、私、本当に好きだった。」

ここまで言ってくれた友達に、嫌とは言えないだろう。

そんなこんなで、私は、台本を書くことになった。
そして、何故か演出までしている。
まあ、いい。
もともと、演劇は嫌いじゃない。
むしろ好きな部類だ。だから中学で3年間やってこれたのだ。

「ねぇ、リン、ここさ、ピンスポとサスどっちにするべき?」

「断然サス。ピンスポじゃ雰囲気が出ない。」

ほおほお。と、和美は本を持って頷く。
うん。素直でいい子。

あたしの午後は、いつもこんな風。
穏やかで、静かな時間。
あたしは、この時間が、一日の中で一番好きだ。
< 16 / 34 >

この作品をシェア

pagetop