幸福論
「先輩は、メイクしないんですか?」

「平日はしないね。」

「えー?なんでですかあ?先輩可愛いのにー。」

「お前に言われたかねえよ。」

美紀は何も言い返さない。
可愛いからだ。自分でも自覚してるんだろう。

「あ、そういえば先輩、昨日補習って言ってましたけど、それ今日もですか?」

「うん。そうらしい。」

「いつまで続くんですか?」

「わかんね。担任の独断だもん。」

「あ、物理の補習なんですか?」

「いや、数学。物理は、特別プリントみたいの出されちゃってさー。
 しかも補習って、大人数でやるあれじゃないんだよー。1対1の補習。
 おまけにあの『拷問部屋』に監禁だぜ?
 あんなもん補習って言わないって。」

「へぇー。先生、誰なんですか?」

「桂木。」

時が止まる。
いや、違うな、単に美紀が固まっただけだ。
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