蜜林檎 *Ⅱ*
そんな話を病室で、百合と
雅也がしていた事など

知らずに二人は
小さな命を見つめる。 

「可愛いでしょう?」

そこへ現れたのは百合と
身内を近くの駅まで送って
今、帰って来たばかりの
真だった。
   
百合の起き上がって歩く姿に
樹は驚く。

「ユリ・・・歩いて平気?」

樹の驚く姿が、菜那を産んだ
後に見せた真の表情と重なる。
   
子供を産んで、はい終わり
ゆっくり休んでください。
 
という訳には、いかないのが
お産である。
 
ゆっくりと休んでいる時間
など、母親には無い。
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