淡い記憶
「今日、プールあるのお?」
「うん、秦野先生が入れってさ」
一歩前に出て、聞こえるように答えた青木に、文句でも言いたげに、
「え~~」と言って女子の数人は、女子の部室に入っていった。
「また、自転車で行こうよ」
青木は陽一郎を振り返り断言するように言った。
そう、あれは、疲れたハードなツアーだったけど、面白かった。
青木もそれを感じていたに違いない。
青木は陽一郎の返事も待たずに、初の水泳の準備にとりかかった。
少し晴間も見え、入念に準備体操をして体をほぐしてから、
体に水をかける。やはり冷たく、となりで女子の黄色い声が止まない。
夏には真っ黒になっていた女子も、
すっかり肌の色が抜けて、白く生めかしい。
元々色白の陽一郎も、すっかり色が抜けて、白くなっている。
そんな中でも、青木だけは、地黒なのか、真夏よりは、
色が薄いものの、小麦色の肌をしていて、
健康的で引き締まった体がいっそう引き締まって見える。
水の中に入ってみると水のほうが暖かく。
女子も男子も自分の泳方で二十五mのプールを十往復して、
一旦休憩をとる。水から出ると寒く、一挙に体温が奪われて、
唇が紫色になっている者も多い。
いつの間に来たのか秦野先生が「今日は寒いから、早く切り上げよう」と言い、
みんなは走って更衣室に駆け込んだ。
女子の更衣室とは、コンクリートの壁一枚だが、
きゃあきゃあと大騒ぎで着替えている。
冷えきった体をタオルで擦り、体温を上げる。
震えは止まらず、訳のわからない言葉が口から発せられる。
自分の腕を触ってみると体温が無いかのように冷たい。
素早く服を着て、濡れた頭を水泳部所有のドライアーで乾かす。
ドライアーの音やら、女子の声やら、訳のわからない音で、
天上の低い更衣室は、洞窟のように響いていて、
秦野先生に声をかけられ、遅れて更衣室に入ってきた、
まだ服も来ていない青木と田中に、声をかけても聞こえない様子なので、
近くにいた青木の肩を叩いた。その肩は、冷たく体温を感じない。
「うん、秦野先生が入れってさ」
一歩前に出て、聞こえるように答えた青木に、文句でも言いたげに、
「え~~」と言って女子の数人は、女子の部室に入っていった。
「また、自転車で行こうよ」
青木は陽一郎を振り返り断言するように言った。
そう、あれは、疲れたハードなツアーだったけど、面白かった。
青木もそれを感じていたに違いない。
青木は陽一郎の返事も待たずに、初の水泳の準備にとりかかった。
少し晴間も見え、入念に準備体操をして体をほぐしてから、
体に水をかける。やはり冷たく、となりで女子の黄色い声が止まない。
夏には真っ黒になっていた女子も、
すっかり肌の色が抜けて、白く生めかしい。
元々色白の陽一郎も、すっかり色が抜けて、白くなっている。
そんな中でも、青木だけは、地黒なのか、真夏よりは、
色が薄いものの、小麦色の肌をしていて、
健康的で引き締まった体がいっそう引き締まって見える。
水の中に入ってみると水のほうが暖かく。
女子も男子も自分の泳方で二十五mのプールを十往復して、
一旦休憩をとる。水から出ると寒く、一挙に体温が奪われて、
唇が紫色になっている者も多い。
いつの間に来たのか秦野先生が「今日は寒いから、早く切り上げよう」と言い、
みんなは走って更衣室に駆け込んだ。
女子の更衣室とは、コンクリートの壁一枚だが、
きゃあきゃあと大騒ぎで着替えている。
冷えきった体をタオルで擦り、体温を上げる。
震えは止まらず、訳のわからない言葉が口から発せられる。
自分の腕を触ってみると体温が無いかのように冷たい。
素早く服を着て、濡れた頭を水泳部所有のドライアーで乾かす。
ドライアーの音やら、女子の声やら、訳のわからない音で、
天上の低い更衣室は、洞窟のように響いていて、
秦野先生に声をかけられ、遅れて更衣室に入ってきた、
まだ服も来ていない青木と田中に、声をかけても聞こえない様子なので、
近くにいた青木の肩を叩いた。その肩は、冷たく体温を感じない。