どこかで誰かが…
大沢との関係を、白紙にだけはしたくないと言うのが、佳菜子の今の気持ちだった。



佳菜子とゆっこが駅に着いた頃、佳菜子の携帯が鳴った。


それは、ミーティングを終えた大沢が、メールを読んでかけてきたもので…


「あ、おめでとう!」

「今、どこ?」

「もう駅。」

「なんで?」

「あんたのファンを幻滅させたら悪いと思って。」

「は?待ってろ。今から行くから。」


一方的に電話が切れた。


急いでトイレに駆け込む佳菜子とゆっこは、髪を整え合い、デオドラントスプレーをかけまくる。


佳菜子の親友であり、清瀬の彼女として、
ゆっこにとっても、気の抜けない対面だ。


さっきのことは気になるトコロではあるが…

慌てて追い掛けてくるというのだから、目をつぶることにした。


しばらくして姿を見せた大沢。


挨拶も早々、ちょうど電車が入ってきて、

「乗ろ乗ろ!はい!はいはい!」

大沢に急かされ、三人は電車に乗り込んだ。


まるで何かから逃げるように…


一息吐き、

「俺、カッコ良かった?」

浮かれて聞く大沢に、

「コテンパンにやってやるんじゃなかったの?」

佳菜子の言葉は辛口だ。

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