どこかで誰かが…
一緒に帰ることも増えた二人は、誰かしらに目撃されていた。


「あたしも見た!あ…でも、帰る方向が同じだけだって言ってたけど。」

「怪しい〜!問い詰めてやる!」


そんな時、

「ほっときなって!本人がそう言うんだったら、そーなんだよきっと。」

止めに入るのは、ゆっこだった。


「そーかなぁ?なんか、いー感じだったよぉ…つきあっちゃえば良いのに〜」

「そんなこと言って、試合が近いのに、こじれでもしたらメンドクサイでしょ!」

「あ…それもそーだね。」


こうして二人を、
周りが温かく見守っていることも、
それがすべて、ゆっこのお陰であることも、
全く気が付かないまま…

その日も、同じ車両に乗り込み、
いつもの他愛ない話で、高木が降りる駅までの時間を費やしていた。


「じゃな。」

「うん。明日ね。」


二人は、別れ際、いつも手を振らなかった。


高木はホームに降りると、車両に残る佳菜子の方を振り返ったことがなく、
いつも、さっさと歩いて行ってしまう。


佳菜子はその様子を、走りだす電車の窓から見送りながら、

(こっち向け!…………やっぱり見ないか……)


いつか高木がこっちを向く日を、ゲーム感覚で楽しんでいた。


その胸の奥に潜む、もうひとつの気持ちなんてものを、深く考えることなど、一度もなく…

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