憂いの塔



霧生の切れ長の目が緩み、整った口が爽やかな笑顔を作る。



「霧生が起きてるなんて珍しいな。」

霧生は大抵どこでも寝ている。

「そうか?」



「なあ、」


私は続けた。

「お前は誰だ?」





霧生の顔が一瞬、引きつったのがわかった。



私はフッと口角を上げ、庭から奴を見下ろした。



ソイツは頷くように瞼を閉じて俯いた。



お手上げと言うように―――。




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