あなたへ。
店に入ると、店員の「いらっしゃいませ」の挨拶よりも、耳障りな甲高い声の方が聞こえてきた。
時刻は22時18分。もう夜も遅い時間ではあるが、店内はスーツを着たサラリーマン風の男性や、作業服を着た中年男性の数名が、手にしたカゴに弁当やカップラーメンなどを無造作に放り込んでいく。
仕事帰りなのだろう。皆一様に疲れた表情を浮かべている。深夜のコンビニは、こうした企業戦士達の味方なのだなと思った。
そんな彼らを苛立たせるに違いない黄色い声は、レジのまん前から発せられている。
そちらに目を見やると、あたしは思わず息を呑んだ。
バイト中でレジに立つ明と、あたしと同じくらいの年齢の女の子が二人、楽しそうに話している。
店内を物色しながら三人の会話を盗み聞きしていると、バンドがどうのライブがどうのと言っている。
どうやらこの子達を次回のフェニックスのライブに誘っているようだ。
女の子達は満面の笑みで明を見つめながら、「楽しみ」だの「絶対行く」とはしゃいでいる。
明はあたしの存在には露ほども気付いていない。
店内にいる客も、そんな彼らを迷惑そうに顔をしかめながら、チラチラと見ていた。
あたしはたまらなくなり、適当にペットボトルのコーラと、ポッキーとガムを手に取り、ずんずん明のいるレジへと進み、女の子の一人を半ば強引に押しのけて商品をカウンターに乱暴に置いた。
「杏子……」
明は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔してあたしを見ている。
女の子二人はバツが悪そうに目を合わすと、「じゃあお疲れ様でーす」を店から去っていった。
店から出ていく途中も、振り向いてあたしを見ながら、ヒソヒソ小声話すのも忘れずに。
「…どうしたんだよ?」
明は商品をレジ打ちしながら、怪訝な表情を浮かべている。あたしは何も答えず、バッグから財布を取り出す。
「…456円です」
明が商品の合計金額
「…今の子達、誰?」
財布から千円札を出し、明に手渡すと明に尋ねた。
「別に。バイトの夕勤の子達だよ。17時から22時」
明の勤務シフトは22時からだから、その前の時間帯に働いているバイトの子、ということだ。
あたしが働いている店でもそうだが、シフトの入れ替わりの時は引き継ぎということで、業務連絡を伝え合ったりする。
それで次第に打ち解け、仕事以外の会話もするようになるのだろう。
あたしは同僚と、仕事以外の事は話さないが。自分でもまずいと思うが、職場に全くと言っていいほど馴染んでいない。
明は商品をレジ袋に入れてくれて、あたしに手渡した。
「ごめんね、仕事中いきなり来て。じゃあ、頑張ってね」
あたしはそれを受け取ると、早々にこの場から立ち去ろうとした。
明は何か言いたい様な感じだったが、あたしの後ろに次の客が並んでいた為、それを言葉にすることはなかった。
もう一つのレジで客の応対をしている、明の相方と思われる20代半ばの店員が訝しげにあたしを見ていた。
時刻は22時18分。もう夜も遅い時間ではあるが、店内はスーツを着たサラリーマン風の男性や、作業服を着た中年男性の数名が、手にしたカゴに弁当やカップラーメンなどを無造作に放り込んでいく。
仕事帰りなのだろう。皆一様に疲れた表情を浮かべている。深夜のコンビニは、こうした企業戦士達の味方なのだなと思った。
そんな彼らを苛立たせるに違いない黄色い声は、レジのまん前から発せられている。
そちらに目を見やると、あたしは思わず息を呑んだ。
バイト中でレジに立つ明と、あたしと同じくらいの年齢の女の子が二人、楽しそうに話している。
店内を物色しながら三人の会話を盗み聞きしていると、バンドがどうのライブがどうのと言っている。
どうやらこの子達を次回のフェニックスのライブに誘っているようだ。
女の子達は満面の笑みで明を見つめながら、「楽しみ」だの「絶対行く」とはしゃいでいる。
明はあたしの存在には露ほども気付いていない。
店内にいる客も、そんな彼らを迷惑そうに顔をしかめながら、チラチラと見ていた。
あたしはたまらなくなり、適当にペットボトルのコーラと、ポッキーとガムを手に取り、ずんずん明のいるレジへと進み、女の子の一人を半ば強引に押しのけて商品をカウンターに乱暴に置いた。
「杏子……」
明は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔してあたしを見ている。
女の子二人はバツが悪そうに目を合わすと、「じゃあお疲れ様でーす」を店から去っていった。
店から出ていく途中も、振り向いてあたしを見ながら、ヒソヒソ小声話すのも忘れずに。
「…どうしたんだよ?」
明は商品をレジ打ちしながら、怪訝な表情を浮かべている。あたしは何も答えず、バッグから財布を取り出す。
「…456円です」
明が商品の合計金額
「…今の子達、誰?」
財布から千円札を出し、明に手渡すと明に尋ねた。
「別に。バイトの夕勤の子達だよ。17時から22時」
明の勤務シフトは22時からだから、その前の時間帯に働いているバイトの子、ということだ。
あたしが働いている店でもそうだが、シフトの入れ替わりの時は引き継ぎということで、業務連絡を伝え合ったりする。
それで次第に打ち解け、仕事以外の会話もするようになるのだろう。
あたしは同僚と、仕事以外の事は話さないが。自分でもまずいと思うが、職場に全くと言っていいほど馴染んでいない。
明は商品をレジ袋に入れてくれて、あたしに手渡した。
「ごめんね、仕事中いきなり来て。じゃあ、頑張ってね」
あたしはそれを受け取ると、早々にこの場から立ち去ろうとした。
明は何か言いたい様な感じだったが、あたしの後ろに次の客が並んでいた為、それを言葉にすることはなかった。
もう一つのレジで客の応対をしている、明の相方と思われる20代半ばの店員が訝しげにあたしを見ていた。