あなたへ。
やはり、明の家は15分ぐらいで着いてしまった。
バス通り沿いの道路から、一本中道に入ったところに斎藤邸は存在していた。
さすがS市のベッドタウンと言うだけあり、周りは同じ様な住宅が立ち並んでいる。
夜になると、きっと暗くて一人で歩くのは怖いと思ってしまった。
明の家は、あたしが想像したよりもややこじんまりした一軒家だった。
木造2階建てで築年数は20年前後。家の前に駐車スペースと、猫の額ほどの広さの庭。
あたしの家と同じくらいのレベルと言えよう。
明はその駐車スペースに馴れた感じでバック駐車した。この広さだと、もう一台ぐらいは停められそうだ。
「着いたよ」
「ありがとう」
そして二人は車から降りた。明が庭の隅にある、やけに年季の入った犬小屋から出てきた犬に、「おうサチ、ただいま」と笑顔で声を掛けた。
その笑顔が、無邪気な小さな男の子の様で、またあたしはキュンとなった。
「これが、飼っている犬のサチ?」
「うん。杏子が描いた絵に似てるしょ?」
その犬は、初めて明と二人で会ったファミレスで画像を見せてもらった通りだった。
大きさは中型犬の範囲内で収まり、体全体はフサフサとした白い毛に覆われているが、老齢のせいか毛並みがパサパサしている。右耳と左目の周りに、黒いブチがあった。
そこだけは、まさにあたしが明への手紙に描いた「ゲンゴロウ」そのままだ。
……絵と似ているかどうかは微妙だが。
サチは大変おとなしく、明に撫でられながら、お座りをしてあたし達に尻尾を振っている。
「おとなしいね」
「もう10歳だからな。昔はもっとやんちゃだったんだけど。長生きしてもらいてえな」
明は、本当に犬が好きなんだなぁ。前にデートで、明は動物全般と言うか「毛が生えていればなんでも好き」と豪語していた。
それで、二人でペットショップに犬や猫を見に行った時もあった。始終明は、「どの子も可愛い」をはしゃいでいた。
あたしもおそるおそるサチの頭を撫でてみたが、気持ちよさそうに目を細めただけだった。
「さ、入るか」
明にそう言われて、あたしは体に緊張が走ったのを感じた。
明があたしの不安を感じ取ってくれたのか、優しくあたしの手を取ってくれた。思わずあたしは、その手を握りしめる。
明が手にした鍵で、玄関の施錠を解除しドアを開けた。
玄関には明のものと思われるサンダルやスニーカーや、ライブ時に履く革ブーツなどが何足も並んでいて、婦人物と思われるパンプスやサンダルも数足あった。
お母さんのもの?そしてお父さんの靴は?そう思ったけど、その疑問を口に出すのは躊躇われた。
「おじゃまします…」
家に上がって、あたしは言ったが明が「誰もいねえよ」と言っただけだった。
……なに!?
今、なんと!?
だ、誰もいないって、それはもしかして……
「…え、お母さんは…?」
「パートで夜まで帰ってこねぇ」
あたしが恐る恐る訊ねると、明はしれっとした口調で答えた。
お母さんがいない事に正直ホッとしたが、またもあたしの体に緊張が走る。先ほどのものとは、比べ物にならないくらい強く。
「まぁ座れよ。今、飲み物持ってくるからさ」
明にそう促され、あたしは居間のソファに腰掛けた。明は台所へと消えていく。
居間の広さは12畳ぐらいで、あたしの家と同じぐらいだった。家の中は割りと煩雑で、あまり掃除や片付けをしていないように思った。
床のところどころに新聞やチラシが散乱し、缶ビールの空き缶や空のワイン瓶などが転がっていた。
それなのに、テレビはあたしの家のものより二周りくらい大きく、さらに最新式と思われた。
今あたしが座っているソファも、妙に座り心地の良い革製のもので、おそらく高級品なのだろう。
床に散らばるゴミとそれらが一緒にあるのは、当然不釣合いに感じる。
「ごめんな、汚くて。バイト終わってから、ちょっと片付けようと思ったんだけど、寝ちまってさ」
「ううん」
台所の方から明の声がして、あたしは短く答えた。
するとあたしはテレビが置かれている棚に、写真立てがあるのに気付いた。思わず立ち上がり、それを手に取る。
そこには30代半ばぐらいと思われる男女と、小学校低学年ぐらいの女の子と、幼稚園ぐらいの年頃の男の子が写っていた。
バス通り沿いの道路から、一本中道に入ったところに斎藤邸は存在していた。
さすがS市のベッドタウンと言うだけあり、周りは同じ様な住宅が立ち並んでいる。
夜になると、きっと暗くて一人で歩くのは怖いと思ってしまった。
明の家は、あたしが想像したよりもややこじんまりした一軒家だった。
木造2階建てで築年数は20年前後。家の前に駐車スペースと、猫の額ほどの広さの庭。
あたしの家と同じくらいのレベルと言えよう。
明はその駐車スペースに馴れた感じでバック駐車した。この広さだと、もう一台ぐらいは停められそうだ。
「着いたよ」
「ありがとう」
そして二人は車から降りた。明が庭の隅にある、やけに年季の入った犬小屋から出てきた犬に、「おうサチ、ただいま」と笑顔で声を掛けた。
その笑顔が、無邪気な小さな男の子の様で、またあたしはキュンとなった。
「これが、飼っている犬のサチ?」
「うん。杏子が描いた絵に似てるしょ?」
その犬は、初めて明と二人で会ったファミレスで画像を見せてもらった通りだった。
大きさは中型犬の範囲内で収まり、体全体はフサフサとした白い毛に覆われているが、老齢のせいか毛並みがパサパサしている。右耳と左目の周りに、黒いブチがあった。
そこだけは、まさにあたしが明への手紙に描いた「ゲンゴロウ」そのままだ。
……絵と似ているかどうかは微妙だが。
サチは大変おとなしく、明に撫でられながら、お座りをしてあたし達に尻尾を振っている。
「おとなしいね」
「もう10歳だからな。昔はもっとやんちゃだったんだけど。長生きしてもらいてえな」
明は、本当に犬が好きなんだなぁ。前にデートで、明は動物全般と言うか「毛が生えていればなんでも好き」と豪語していた。
それで、二人でペットショップに犬や猫を見に行った時もあった。始終明は、「どの子も可愛い」をはしゃいでいた。
あたしもおそるおそるサチの頭を撫でてみたが、気持ちよさそうに目を細めただけだった。
「さ、入るか」
明にそう言われて、あたしは体に緊張が走ったのを感じた。
明があたしの不安を感じ取ってくれたのか、優しくあたしの手を取ってくれた。思わずあたしは、その手を握りしめる。
明が手にした鍵で、玄関の施錠を解除しドアを開けた。
玄関には明のものと思われるサンダルやスニーカーや、ライブ時に履く革ブーツなどが何足も並んでいて、婦人物と思われるパンプスやサンダルも数足あった。
お母さんのもの?そしてお父さんの靴は?そう思ったけど、その疑問を口に出すのは躊躇われた。
「おじゃまします…」
家に上がって、あたしは言ったが明が「誰もいねえよ」と言っただけだった。
……なに!?
今、なんと!?
だ、誰もいないって、それはもしかして……
「…え、お母さんは…?」
「パートで夜まで帰ってこねぇ」
あたしが恐る恐る訊ねると、明はしれっとした口調で答えた。
お母さんがいない事に正直ホッとしたが、またもあたしの体に緊張が走る。先ほどのものとは、比べ物にならないくらい強く。
「まぁ座れよ。今、飲み物持ってくるからさ」
明にそう促され、あたしは居間のソファに腰掛けた。明は台所へと消えていく。
居間の広さは12畳ぐらいで、あたしの家と同じぐらいだった。家の中は割りと煩雑で、あまり掃除や片付けをしていないように思った。
床のところどころに新聞やチラシが散乱し、缶ビールの空き缶や空のワイン瓶などが転がっていた。
それなのに、テレビはあたしの家のものより二周りくらい大きく、さらに最新式と思われた。
今あたしが座っているソファも、妙に座り心地の良い革製のもので、おそらく高級品なのだろう。
床に散らばるゴミとそれらが一緒にあるのは、当然不釣合いに感じる。
「ごめんな、汚くて。バイト終わってから、ちょっと片付けようと思ったんだけど、寝ちまってさ」
「ううん」
台所の方から明の声がして、あたしは短く答えた。
するとあたしはテレビが置かれている棚に、写真立てがあるのに気付いた。思わず立ち上がり、それを手に取る。
そこには30代半ばぐらいと思われる男女と、小学校低学年ぐらいの女の子と、幼稚園ぐらいの年頃の男の子が写っていた。