嘘つき⑤【-sign-】
残していった爪痕は小さいものじゃない、と何故だかあたしは泣きそうになった。
だって、ほら、
「…照れてるのよ、ねぇ?」
普段の落ち着き払った天童さんからは見てとれない動揺が、こんなチープな言葉を吐かせたりする。
ピリとした空気。あたしはまだこの場にいてもいいのかなんて疑問文も間に合わない位、息を呑んで、表面だけ笑い繕ってみせる『女』の意地から目が離せない。
こんなに強引に詰め寄るる事はあたしにはきっと出来ない。そんなに深い関係でもなかったし、だけどそれよりも、守りたいプライドが彼女とは違うから。
そう思っても、尚、沸き上がる様なこのどうしょうもない感情は、別のあたしを見るみたいで、直視できなかったんだ。