嘘つき⑤【-sign-】

気付けば、



声も上げず、発したのは嗚咽のような押し殺した泣き声。



嫌な感情が体から抜けないのに、愁哉さんはまるで全て知っているかのように抱き止める。
冷たい表情は変わらないのに、触れた肌の温もりが暖かくて、ゆっくりと鋭い棘が落ちる。




どうして?



ねえ?瑠香さん?



父様?



何が『大人』なのか



私には分かりませんわ。



割り切る事や、嘘を塗り固めた身体を重ねる事が『大人』なら



分からなくてもいい。



愁哉さん、




あなたは知っているの?



それでも、瑠香さんを愛してる?




絡み合った運命の糸は、振り解くには複雑過ぎて、いつのまにか、私にさえ、絡まり付く。


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