嘘つき⑤【-sign-】
愁哉さんと瑠香さんに用意された部屋は隣り合わせで、その部屋の前で瑠香さんに出会う。
「…愁哉?琴ちゃん?」
疑問文を口にする声はもういつもの瑠香さんで、だけど、やっぱり間違いないなくさっきの声。
表情の見えないその顔に『女』を感じた私には、ひどく心地が悪い。
「お嬢様の体調が良くない。部屋まで送る」
愁哉さんは簡潔にそう言って、瑠香さんを横切る。
瑠香さんはそれ以上何も聞かず、私は瑠香さんの顔さえ見れなかった。
部屋の扉の前で、
愁哉さんの腕から離れて、
消えていく温度に、また涙が出そうになる。
結局、ひとりぼっちね。
真実、それは私が自嘲せず素直に思った感情。
愁哉さんは、射抜くように見つめて、
「…そのような顔しないでくれますか」
秀麗な顔は少しだけ切なそうに笑った。