嘘つき⑤【-sign-】
愁哉さんの感情が手に入らないと知りながら、あの夜触れた温もりが忘れられなくて、婚約者に選んだ私を愁哉さんは軽蔑しているかもしれない。
あれだけ拒んだ『大人』にいつかあたしも色を染めて、形だけの関係を選んだ。それでも欲しかったのは、それでも瑠香さんを愛していた愁哉さんの感情。
ねぇ、瑠香さん?
あなたはこの感情から
逃げ出したの?
それとも、受け入れたの?
いつまでたっても消えない疑問文は私に絡まって、いつしか、笑う事をやめた。そう、まるで人形みたいに。
大丈夫、感情を殺す事には慣れているもの。
愁哉さんも、儀式的な態度は変わらず、
義務的に傍にいてくれた。
それでも良かったの。
理由なんてない。
好きで
好きで
好き過ぎて、どうしようも無かったから。