嘘つき⑤【-sign-】

―――――――――――――…
ゆっくりと動く視界に、規則的な揺れは穏やかで、

触れる温もりが懐かしくて、




このまま眠っていたい意識は、その暖かさの離れる感覚で目をさます。



躊躇する様に、触れる指先。


優しい息遣い。



私は、この温度を知っている。



「…起きましたか」



気付けば、私は自室のベッドの上で、



「…ここまで運んで下さったの…?」




心配そうに覗き込む彼に胸が締め付けられるように痛んだ。



< 52 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop